増殖する文鳥たち ― ミクロな世界と個性の共演
手びねりによる唯一無二の造形に、群れる文鳥、星、そして金彩の楕円が散りばめられた幻想的な作品。一見すると、愛らしい文鳥たちが集う賑やかな作品ですが、その真の構想は驚くほど独創的です。
作者は獣医としての経歴を持ち、かつて顕微鏡を通じて細胞検査という生命の深淵に触れていました。 そこで目にした「増殖していく細胞の圧倒的なエネルギー」と、自身が愛してやまない「文鳥」。その二つを融合させた本作において、文鳥たちは「腫瘍細胞」のメタファー(比喩)として描かれています。
作品に冠された『ブンチョーマ』という名は、文鳥と、医学用語で腫瘍を意味する接尾辞『-oma(オーマ)』を掛け合わせたもの。 愛らしい名前の裏側に、生命の真理を忍ばせています。
|増殖のエネルギー|
核分裂を思わせる二つの嘴(くちばし)を持つ文鳥や、ぎょろりとした目つきで奔放に振る舞う文鳥たち。そこにあるのは、既存のルールを無視して増殖し続ける細胞の圧倒的な生命力です。周囲を浸食するように、一羽一羽が強い個性を放ちながら「好き勝手に増殖し、暴れる細胞」そのものの姿が描き出されています。
|日常の断片|
よく見れば、うちわを持って「推し活」に励む者、焼き芋に興じる者、おにぎりを頬張る者、ハロウィンを楽しむ者。文鳥たちは自由を謳歌しています。作者曰く、この作品を絵付けしたのが2025年の10月。文鳥たちは秋を楽しみ、また2025年の秋といえば米騒動もあり、世相を反映しているのも興味深いです。
|生命のドラマ|
金彩で描かれた楕円は「血管の断面」を意味し、そこを通って次なる地へと転移していく細胞のダイナミズムを表現しています。さらに、腫瘍を狩る「Tキラー細胞」をネコで表現。本来は、可愛いはずの文鳥を「腫瘍」とし、腫瘍からしたら恐ろしいはずの「攻撃者(Tキラー細胞)」をネコで描く発想。免疫学的世界観がシニカルに描かれています。
九谷焼という伝統の枠組みの中で、細胞というミクロな世界を文鳥で表現する。作者の内面と経歴から溢れ出す強烈な個性が、一羽一羽の緻密な描写と重なり、唯一無二の魅力を放つ逸品です。
商品サイズ:幅22cm×奥行21cm×高43cm
箱の種類:桐箱紐通し